歯科における偶発症
厳しかった夏が過ぎ、ようやく過ごしやすい日々となってきました。まだ残暑は続いているとは言え、日が暮れる時間の早さに秋の訪れを感じております。
9月は防災月間としてよく知られています。それと同時に9月9日は救急の日とされていることから、救命救急について学ぶイベント等も各地で行われていました。
けが人や急病人が発生した場面にたまたま居合わせる可能性は誰にでもありますので、いざという時に行動できるよう応急手当てについて学んでおくことは大切です。
特に歯科医院という環境は、緊張や薬剤の影響によって体調が急変するリスクの高い場所と言えます。そのため歯科医療従事者を対象とした救命救急講習も行われており、私も先日、所属する京橋歯科医師会にて受講してきました。
今回の講師は母校である東京歯科大学名誉教授の一戸達也先生で、テーマは「歯科治療時の偶発症−緊急薬品の使用法と緊急対応トレーニング」でした。
講義の中で血管迷走神経反射、過換気症候群、低血糖発作、狭心症、アナフィラキシーショック等が起こった際の原因・症状、対処法について話がありました。これらを可能な限り避けるためには全身状態の確認(治療中の病気の有無・飲んでいる薬の種類)をしっかりと行うことが大切であるということで、治療前に患者さんの体調や日頃から内服している薬に変わりがないか確認することの重要性を再認識しました。
先に挙げた偶発症の中で特に多いのは『血管迷走神経反射(脳貧血の状態)』です。主な原因は精神的(不安・恐怖・緊張)、身体的(痛み)ストレスで、注射や歯を削るときに起こりやすいと言われています。自覚症状としては悪心・悪寒・めまいがあり、他覚的には血圧低下・脈拍数の減少・顔面蒼白があります。対応として診療用チェアーを横にして足を高くしておくことで回復することが多いですが、必要に応じて酸素を吸入できるように普段から準備しています。
私もこれまで診療を行ってきて、何度か血管迷走神経反射を起こした患者さんに遭遇したことがあります。どなたにも起こりうることですので、治療時に何かおかしいなと感じた際にはすぐにおっしゃってください。
歯科診療するにあたり日頃から患者さんのストレスや不安をできるだけ取り除けるよう心がけてはいますが、何か気になることがありましたら遠慮せずにお知らせください。