デンタルプラーク(歯垢)のしわざ

院長コラム 第4回 2004.10.20

いつの間にか秋も深まり、各地から紅葉の便りが届けられる今日この頃です。 しかし、今週はまた台風が日本列島を縦断しています。もうじき東京にもやってくるとのことで雨が激しさを増してきました。 今後の予想進路にかかる皆様はくれぐれもお気をつけ下さい。

さて先月お話ししました虫歯にならない方法はご理解いただけましたでしょうか。 いざ実行しようとするとかなり難しかったと思います。取っても取っても付いてくるのがデンタルプラーク(歯垢)です。

このプラ―クは、ストレプトコッカスミュウタンスが歯にへばり付いているものだとお話ししました。 しかしこれは24時間以内のことで、それ以上時間がたってミュウタンス菌が歯にしっかりと腰をすえてしまうと、 口腔内にいるその他の細菌も居心地のよさに誘われて1種類2種類とその種類が日を追って増加してゆきます。

そしてプラ―クが出来て2~3日後から3週間もすると、プラ―クの中には、様々な細菌の代謝産物やそれらの屍骸が含まれるようになります。  べったり付着したプラークの毒素にいかに丈夫な歯でも耐え切れず虫歯が進行していきますが、歯肉は懸命に細菌の侵入を防ごうとします。 歯肉の毛細血管にどんどん血液を送り込み、血管から白血球を出して、細菌との戦いが始まるのです。 この時の状態を歯肉炎といって歯周病の第一段階になります。

そして肉眼的には、普段は薄ピンク色の歯肉が、血液の色が透けて見えて赤くなり、血流が増えるのでむくんで見えてきます。 また血管から白血球が出てくるので歯肉がブヨブヨし、歯と歯肉の隙間から浸出液が出てきて多少膿(うみ)も出てきます。 膿は細菌と戦った白血球中の貪食細胞などの成れの果ての姿です。

この状態のとき歯ブラシをするとブラシに血液が付いていたり、口の中がネバネバした状態を感じるでしょう。 ここで出血を恐れてブラシを控えてしまうと状態を更に悪くしてしまいます。 逆にゴシゴシやりすぎてしまうのも悪化の原因になりますので、早めの受診をお勧めします。

ここで放置してしまうと、次第に歯肉の中の組織が破壊され壊死に陥り、そこにも膿が溜まってきます。この状態を歯槽膿瘍といって痛みも伴うようになります。
ここまでくると歯槽骨の破壊吸収が見られ、歯がぐらついてきます。 いわゆる歯槽膿漏といわれる状態です。歯肉は腫れて物が噛めなくなり、口の中にいつも膿がたらたらと流れ出ているので、ひどい口臭がするようになります。

口臭の原因はいろいろですが、歯槽膿漏の口臭が最も強烈で百年の恋も一気に冷めてしまいます。
自分が辛いだけでなく周りにいる人にも不快感を与える病気はそうざらにはありません。 テレビのCMでもやっているように、これを更に放置すると歯が抜け落ちてしまいます。

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