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 コラム 第69回     2010. 3. 26

再生医療のお話

 寒さ暑さも彼岸までというように、日ごとに春めき、道行く人たちもコートなしの姿が目立つになってきました。でもまだ寒い日もあって、衣替えをいつにするか悩むところです。

 先日、毎日新聞一面のトップニュースで、歯ぐき再生の臨床実験が始まったことが取り上げられていました。自分の体の骨髄から抽出し、培養した体性幹細胞に基材を混ぜてペースト状にしたものを歯周病になった歯ぐきに注入すると、8人中6人の歯ぐきが回復したというものです。今回の研究は全て軽症の患者さんに対して行われ、今後は重症例にも実施して成果を期待したいとのことでした。

 私は、この研究が、将来の歯科医療の形を変えるくらい可能性のあるものとして期待しています。歯周病で失われた歯根膜や槽骨が、自分の持っている細胞によって再生するというのは夢のような話でした。以前のコラム「第32回 歯が蘇るお話 (2007.2.26)」で、東京理科大学での研究のお話を書きましたが、今回の話題はこれとは別で、自身の持っている幹細胞から歯周組織を再生させるというものです。ですから、これからの研究成果がとても楽しみです。

 今後は、どの程度の症例に効果が期待できるのかを見極めるのは勿論のことですが、他にもいくつもの課題があると思います。また、骨髄は、腸骨(腰骨)から採取するのですが、当然リスクを伴います。年齢や全身状態によってもその差が出ます。どのくらいの量の骨髄を採取すれば、試験管の中で手術に必要な量の体性幹細胞を得られるのかの見極めも必要ですし、細胞がどの時期に最も分化しやすいのかも調べなければなりません。このように数々の問題を解決しながら、臨床実験は進められてゆきます。

 再生医療の中でも、この体性幹細胞を利用する技術は画期的で、iPS細胞やES細胞などを使うより、癌化など病的な変化がおきにくいと言われています。しかし、試験管の中で育てたものを体に戻し、失われた組織を回復させることがその後、体の中にどのような変化をもたらすのか、この兼ね合いが難しいところです。

 新聞報道のように、「全国3700万人の歯周病患者に朗報」などと書かれると、もう治ったつもりになってしまう人がたくさん出てしまうことが心配です。歯周病は、歯磨きが一番の予防法であり、治療法だということを忘れないで下さい。せっかく歯ぐきを再生させても、歯磨きを怠っては元の木阿弥です。毎日の歯磨きを習慣にして歯周病を克服するよう心がけましょう。



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