金価格の高騰

今年も残すところ数日となりました。
2025年は日本各地で熊被害が相次ぎ、1年の世相を表す今年の漢字には『熊』が選ばれました。

歯科医療分野に大きく関わった今年のニュースと言えば、金価格の高騰が挙げられます。
今年の初めには金1グラム14,000円台だったのが、年末には25,000円を超え、なんと年初から約70%も上昇しました。世界情勢への不安の高まりから、安全資産とされる金への投資が盛んになり需要が高まったことが、価格高騰につながったと言われています。

歯科治療において、金は昔から材料として大変重宝されてきました。
その理由の1つが、最も優れた耐食性を示す金属であるということです。常に唾液や酸にさらされる過酷な口腔内の環境に置かれても、腐食することがありません。

2つめは、展延性に富むこと。
すなわち、金には壊れることなく柔軟に変形できる性質があります。そのため金の被せ物や詰め物は、歯と金属の隙間なくピッタリと合わせられるのです。適合が良ければ一度治療した後の2次う蝕の発生を防げますので、再治療を避けることができます。実際当院でも、金合金による治療で問題なく何十年も経過している歯を見るのは、珍しいことではありません。

写真は本院での自費診療で製作した金合金の被せもの

矢印の部分が境目を指し、隙間がないのが確認できます

3つめは、合金状態で優れた機械的性質を示すということ。
純金は柔らかすぎるため、歯科治療には金合金が用いられます。この合金の状態で、強度や鋳造性に優れた性質を持つため、虫歯治療だけでなく義歯の材料としても非常に多く使われてきました。

ところが今年のように金価格が高騰するようでは、金を用いた治療を選択しづらくなってきてしまいました。こういった背景から、昨今ではメタルフリーの治療を選択することも増えてきました。
とは言えこれだけ優れた材料なのですから、金という選択肢をなくすと言うのはまだまだ難しいところがあります。
来年は情勢不安が少しでも解消されて、金の価格が落ち着くことを願うばかりです。

片山歯科医院は、今日で2025年の診療が最後となります。今年も1年ありがとうございました。
皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。