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 コラム 第176回  2019. 02. 27

食事を楽しく

 厳しかった冬もようやく峠を越して、各地から春の便りも聞こえて来る頃となりました。 しかし、今年の三寒四温は極端で、雪深い地方での雪崩や水害には十分な注意が必要でしょう。 また、北海道で大きな地震が発生しました。 この時期に被災されて、ご苦労されていらっしゃることを思います。どうぞ、お大切にお過ごしください。

 昨年来、何度か食に関する講演会に参加しました。 人生最後の日まで、食事を美味しく楽しく味わいたいという願いは誰しも同じです。 それを叶える為に、歯科医療に携わる者は如何すべきかをテーマにした講演会が盛んに開催されています。 いくつかの講演会の中から吟味して行って来ました。 高齢者が寝たきりになる原因のトップは、筋肉の衰えで、その次が脳血管障害です。日本人は、平均寿命(男80.21、女86.61)と健康寿命 (男71.19、女80.21)の差が10年近くあるのですが、要介護者となってからの10年間に、好きな食事を楽しく味わえている人が何割いらっしゃるでしょうか。 歯科医が諦めたときが要介護者の最後のときだとの話もありました。 その意味は、「要介護者が口から食べられなくなったらその方の寿命と考え、点滴などはせず穏やかな看取りを考える。(芦花ホーム)」という事だそうです。 また、別の講演会で「ピンピンコロリ 」は、本当に良い亡くなり方なのでしょうか。」 とおっしゃる演者に会いました。 訪問診療先で、ずっとケアしてきた嚥下機能が低下してきたことを、医師、看護師、歯科衛生士、ケアマネージャー等と話し合いご家族にお伝えすることで、 お別れの準備が出来るのだという事の意味だそうです。 「ピンピンゴロリで亡くなる前の一週間を過ごす。」が家族にとっても理想的な看取りになるようです。

 脳血管障害で急性期を過ぎて最初のリハビリが咀嚼回復訓練であり、嚥下機能の確保がその後の人生において最も重要だとおっしゃっていました。 しかし、その時の口腔内状態が歯周病や虫歯だらけであったとしたら、回復に余計な時間と労力がかかってしまうとのことでした。 健康なうちから常日頃口腔ケアを心がけ、歯科健診を受け、美味しく楽しい食事ができていれば、老後は安泰だというお話でした。 コラム165回で書きましたように、美味しく楽しく味わう咀嚼は、脳血流量の増加をもたらし、認知症予防に効果があります。 開業医の大切な役割として、口腔内の健康の意義を患者さんにお伝えし、いつも美味しく楽しい食事をして頂けるようお手伝いする努力をしたいと改めて感じています。



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