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 コラム 第172回  2018. 10. 31

歯の移植のお話

 今年は、暑さが去ったと思いましたら、10月になって台風に日本列島が翻弄されました。 ようやく秋が深まり、各地から紅葉の便りが届く今日この頃です。

 先月のコラムでは歯牙再植の事を書きました。今月はその続きで、自家歯牙移植という治療をご紹介しましょう。 基本的には、歯牙再植手術と同じように、一度抜いた歯をまた植えるのですが、もと在った部位ではなく別の部位に植えるという手術になります。 ここに歯があればなあと思う場所へ、どこかから自分の歯(多くは親知らず)を移植する方法です。 例えば一番後ろの歯が無くなってしまった場合、そこに移植することで、義歯やブリッジの土台として使えるという訳です。 ただし、どの歯を移植するかの選択見極めと、その歯の形状に合わせた骨の穴の形成が重要で、再植よりは難しい治療になります。

 その手順を、簡単に説明しましょう。まず、局所麻酔をして歯を抜きます。その歯を一旦保存液の中に浸しておきます。 求める場所にまた局所麻酔をして歯茎を切開し、抜いた歯を入れるための穴をあけるために骨を削ります。 こうしてできた空間に保存液に浸しておいた歯を植えます。 この後は絶対に動かないようにきつく縫って縛り付けます。 2週間後に糸を取り、後は動揺がなくなるまで、半年以上は待つことになります。

 この様に簡単に手技を書いただけでも歯牙再植との違いがお分かりいただけたことと思います。 骨に穴を開けた後、そこに歯を植える手術は、根と骨の間に隙間が大きいので固定が難しい点でも歯牙再植手術よりもリスクの高い方法になります。

 歯の移植手術は、適応年齢や、口腔内環境、植える場所、移植歯の状態によって予後に大きな差があり難しい治療法です。 しかし、以前よりも歯の固定のための接着剤や、骨再生の良い薬が開発されたこともあり、予後の見極めが可能になってきました。 本院でもできる手術ですので、今後の治療選択肢として導入したいと考えています。



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