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 コラム 第152回  2017. 2. 24

新しい”くすり”に期待

  春一番が吹きましたが、まだまだ寒い日が続きます。 日本海側では大雪で大変だとのニュースが毎日流れています。 雪かきで大変だと思いますが、くれぐれもお大事になさって下さい。 全国的にもインフルエンザが、流行っているようですので、うがい手洗いは、忘れずにいたしましょう。

  近年、日本でも歯ブラシや歯磨きペーストのテレビCMで虫歯予防や歯周病予防について、具体的に何をどのように使ったらよいのか、 宣伝するようになってきました。 加えて、新聞記事を読んでいても、歯科に関連する記事が増えているようにも思います。 そんな中で、歯周病で失われた骨を再生させる薬が日本で開発されたと、一週間ほど前の毎日新聞に掲載されていました。 歯科関係者の間では、それがいつ製品化されるのか10年ほど前から話題になっていたものです。 今はまだ大学病院や歯周病の専門医の居る病医院で、患者さんの了解を得て使用しているところです。

  歯周病で動揺を起こした歯をもとのように動かなくするために、歯科医は毎日のように格闘しています。 歯周病の原因と経過には様々な要因があります。 結果として歯を支える骨が吸収(溶けて)されて動揺を起こし、うまく噛めない、噛むと痛いなどの症状が出ます。 そこで行われる治療は、まずは対症療法として隣の歯と連結したり、ポケット内部にレーザーを照射したり、 歯根の深いところの歯石や歯垢を取り除くために歯肉を開いて手術をしたりします。 開発中のこの薬は、手術の際に表に露出させた歯根の周りに塗って、縫合します。 しばらくするとこの薬が作用して活発に血管を新生させて、歯槽骨やその周囲に健康な歯周組織の再生を促します。 こんな夢のような薬に、患者さんだけでなく歯科医も期待しているところです。

  しかし、歯周病がここまで重症化する前に、体は様々なサインを送ってくれているはずです。 歯ブラシを当てると出血する、歯肉がブヨブヨする、歯石がつく、歯肉から膿が出るなどの症状を繰り返し、 痛みと緩解を繰り返すなどの症状がそれです。 そこに糖尿病である、喫煙者である、口腔清掃を怠りがちであるなどが歯周病を悪化させる要因でもあります。 歯周病が生活習慣病だというのは、この様な環境によって起こり、悪化してゆく病気だからなのです。 歯周病の原因は他にも血液疾患や家族性のものもありますが、全ての炎症性疾患と同様に、早期発見・早期治療と定期検診は欠かせません。 今回話題になっているこの薬も含めて、どんなに再生療法が進歩しても、もともと持っているものに勝るものはありません。 また、全てのものに効くわけでもありません。 体が発信しているサインを見逃さず、早めの受診でこの薬のお世話になる前に、治療を受けるようにいたしましょう。


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