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 コラム 第101回      2012. 11. 29

口腔ケアのお話

  急に寒くなってきました。今朝の予報では東北地方に、猛吹雪の恐れありとのことでした。急な気温の変化に防寒対策をしっかりとして、 風邪など引かぬようお過ごし下さい。 特にご高齢の方は、早めの暖房を心がけるようにしてください。

  先日中央区で、在宅療養シンポジウムといって、介護を必要とする方が、 できるだけ自宅で過ごせるように支援するにはどうしたらよいかを考える催しがありました。 その中で、歯科ではどんな支援ができるのかを話すようにと言う事で、私もシンポジストの一人として講演をしてまいりました。

  人生の締めくくりは、住み慣れた自宅でと望んでいる人は80%なのに対し、実際は80%の人が病院で亡くなっているのが現状だそうです。 そこで国は、最期まで自宅で過ごせる人が一人でも多くなることを目標に、在宅支援のシステムを作るようにと、各自治体に指示を出しました。 基本的なことはどこも同じですが、地域によって習慣や環境が違うため、自治体ごとにニーズに合わせた支援のシステムを考えているわけです。 中央区でも早くから、在宅療養支援協議会を立ち上げて、各会の代表に学識者や区民を加えたメンバーで協議してきました。 そこでにわかにクローズアップされてきたのが、歯科領域の支援のことでした。

  寝たきりになると嚥下力(飲込みの力)が低下し、口から食事をすることが難しくなってきます。 その対処として、胃ろうといって胃に穴を開けたり、経管栄養といって鼻からチューブで栄養剤を直接流し込んだり、 中心静脈栄養といって血管に直接栄養剤を点滴したりして、口から食べられなくても栄養が確保できるような方法がとられます。 これらには食べたものが気管に入って誤嚥性肺炎や窒息の危険を回避する目的もあります。 そこでにわかにクローズアップされてきたのが、歯科領域の支援のことでした。
  そうなると、口から食べないのだから口の中は汚れないのではないかと思われるかもしれませんが、実は逆なのです。 そんな状態の方の口腔内は口から食事をしていたときよりも細菌で汚染され、呼吸や唾液に含まれる細菌で肺炎を起こしやすくなるのです。 ここでクローズアップされてきたのが、日々の口腔ケアです。 口腔ケアは、誰にでもできる日常的なことですが、介護現場では負担の多いものになります。 朝起きて歯磨き、三度の食事の前にしっかりと目を覚まさせて飲み込みの筋肉を鍛える健口体操、食事中の見守り、 食後の歯磨き、そして寝る前の歯磨きを365日休まずに続けなければなりません。 考えるだけで憂鬱になる方も多いことでしょう。 なぜここまでしなければならないのか、目的意識を持って介護していただけるようにお話して参りました。

  咀嚼することは、脳細胞にリズミカルな刺激をもたらし、認知症の予防や、進行速度を遅らせる効果があります。 健口体操は、嚥下するための筋力を鍛えることで、誤嚥の防止になります。 歯磨きは、口腔内細菌の数を減らし、唾液の出を良くします。 これによりおいしくお食事をいただくことができ、生活に活力が出て、会話が弾み要介護者のみならず、周囲でサポートする人たちも笑顔になります。 今まで歯科医がこのことをあまり強調してこなかったせいもあって、見過ごされていた部分でもあります。 口腔ケアは、口腔清掃と口腔機能訓練をセットで行ってはじめて効果がもたらせます。 老後のQOLを高めるためにも、皆さん今から習慣づけておいて下さい。


11月の歌舞伎座 (2012/11/28)

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