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 コラム 第86回     2011. 8. 26

やっぱり自分の歯がいい

  ここ数日は涼しい日でしたが、また暑さが戻ってきました。 しかしそよ吹く風に秋の気配を感じます。甲子園の高校野球も終わり、様々な夏のイベントも終わり、学生たちも、 そろそろ新学期が始まるぞと気を引き締める時期になってきました。震災後の復興にも、次第に具体的な動きが見えてきています。 今後は、原発事故の終息と、政治のリーダーシップが、期待されるところです。

  窓の外では、歌舞伎座の工事が進んでいて、今は一階部分の鉄筋を組み終えて、コンクリートを流しているところです。 見えないところで同時に地下の工事も進行しているということですが、去年の5月から解体が始まり、まもなく1年半になろうとするのに未だ1階部分の工事中です。 地上29階建てで3年間の工事と聞いていますが、後1年半で上まで重ねて内装も完了出来るのかと、余計な心配をしています。 土台が出来上がれば、後は早いのでしょうか。基礎工事の重要性を、改めて認識させられます。

  歯科治療にも似たところがあります。歯槽膿漏でぐらぐらな歯にどんなに立派な冠をかぶせても、上手く機能してくれません。 歯の根を支える骨が安定していてこそ、なんでもよく噛める歯になるわけです。歯は、歯根膜という組織が歯と骨の間に存在して、 硬い歯と硬い骨の間のクッションの役目を果たしてくれています。そしてこの歯根膜の中には神経終末が張り巡らされていて、力が加わりすぎると、 もうこれ以上噛みしめるなという指令が大脳から伝達される機能が備わっているのです。ですから、これらの大切な機能を失いたくはありません。

  何度も書きましたように、歯科の二大疾患であるむし歯も、歯槽膿漏も細菌が原因ですから、細菌のコントロールをして健康状態を取り戻して、 はじめて機能回復のための修復が、可能になるのです。 そこに到達するまでには、時間がかかります。根の治療や、歯ぐきの治療で、通院回数の7割位が費やされます。 患者さんには何回も同じような治療で、何も進んでいないように思われがちですがこの段階、すなわち建築で見られるところの基礎工事に当たる部分が とても重要なのです。

  先日定期健診で3ヶ月ぶりに来院された患者さんも、この前来た時からあまり進んでませんねと、 窓の外を眺めながら、少しがっかりしたようなお顔をされていました。 歌舞伎座の工事の変化を期待してお出でになったのでしょう。 私も、歯科治療においても基礎工事の大切さをお話しながら治療を続けていますが、時々後どのくらい掛かりますかと聞かれることがあります。 そんな時これからは歌舞伎座の工事の進行状況に例えてお伝えするようにしたいと思います。 治療と同じように、遅々として進まないように見えて、着実に進んでいる歌舞伎座の工事を毎日楽しみながら共感を持って眺めています。


8月の歌舞伎座  (2011/8/16)



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