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 コラム 第78回     2010. 12. 28

母のこと

 今年の世相を表す漢字は、「暑」でした。 確かに今年の夏はいつ終わるのかと思うほど、残暑が厳しかったですが、確実に季節は移ろいいつの間にか冬を迎え、今年も残すところ数日となりました。 ただやはり今年はいつもと違い、この季節にまだ15度を上まわる日が続いたり零度に近かったりと変な陽気です。 今年一年を振り返ると、毎月おかしな気象のことから書き出していたのが印象です。 加えて、熱中症に注意をしましょうと、暑さ対策についても何度も書きました。 特にご高齢の方にはきつい年だったかもしれません。

 この時期になると毎年、今年はどんな年だっただろうと一年を振り返るのですが、皆さんにとって今年は良い年でしたでしょうか。 私は、今年の4月に母を亡くし悲しい一年でした。10年前に脳梗塞で右半身マヒと失語症で言葉を失い、要介護5の生活を余儀なくされていました。 初めのうちは車いすの生活でしたが、徐々に寝たきりの生活になってゆきました。 食事は父の懸命の介護のおかげで、ほぼ何でも食べられるようになっていましたし、特に好きなものは、いつもにこにこしながら完食していました。 気分のいい時には歌を歌ったり、笑ったり、不自由ながらも施設の皆さんに支えられて暮らすことができました。 母と会えなくなったさみしさはありますが、心の中ではいつも見守られているという感覚はあります。

 母が倒れた平成12年は、介護保険が始まった年でした。 丁度その時私は、介護認定審査会の委員でしたので、介護の実際を現場から教えてもらい、同時に母の様子を看ながら多くを勉強させてもらいました。 要介護状態になった時、口腔ケアが重要だという事も当事者として経験させてもらいました。 国が在宅療養を推奨する現在、在宅療養支援のために様々な分野から介護を行う家族やヘルパーなどへの教育に力を入れていますが、 口腔ケアのことがそれほど多くを占めていない事に少し危惧を感じています。 その理由の一つは、過去に歯科が診療室から外に出ていく環境になかったことかもしれません。 最近は訪問診療をする歯科医師が増えてきていますが、今後は更に歯科衛生士とともに往診をして、患者さんやご家族、 介護現場の求めに応じられるよう歯科医師自身が変わる必要があるでしょう。

 母を通して、食べること味わうことは最期まで残る楽しみであり、美味しそうににっこりする笑顔がどんなに周りを嬉しくほっとさせるものかを 身をもって知ることが出来ました。 人の終末に向かって果たすべき歯科医の役割も教えてもらいました。 そんな経験から学んだことを活かして、私にできることを来年も励んでいきたいと思っています。

 皆様お元気で、どうぞ良い新年をお迎えください。



12月の歌舞伎座 (2010/12/16)


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