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 コラム 第60回     2009. 6. 26


歯のリサイクルのお話 

ここ数日は夜になると、激しい雷雨に見舞われています。高知では雨が下から降ると、四国の友人が言っていた事を思い出しました。 大粒の雨が勢いよく地面に叩きつけられると、その跳ね返りの高さが半端ではないのでそんな表現になるのでしょう。 入梅ということですが、この蒸し暑さには閉口します。

 先日ある所から、ダイレクトメールが届きました。開けてみると「ご自分の歯、リサイクルしませんか?」と書いてありました。 抜歯した歯を−196℃の液体窒素の中に保存しておいて、必要なときに解凍して活用しようというものです。 そのための保存液が開発されたので、この液を購入して保管料を払えばその会社で管理してくれるというものでした。
 活用法は、歯の移植、歯髄内の細胞から幹細胞を培養して神経、筋、骨の再生医療、DNA鑑定などで、 保存しておくと今後益々利用価値が高まります、ということでした。

 歯は、外側の硬組織と内側の歯髄という軟組織、また歯の根の周りには、歯根膜という軟組織もあります。 ですから歯を冷凍保存する事は、そんなに簡単ではありません。冷凍保存は、凍結速度と保存液そして解凍方法によって、良し悪しが決まります。 ですから、これまでにあちらこちらの大学で研究されてきて、その成果がいま試されているところなのでしょう。

 冷凍保存された健全な歯を必要が生じたときに植え付けるというものですが、これは自分の歯をリサイクルしようと考えたときの最初の発想です。 現在日常的に臨床で行われている歯の移植は、自家歯牙移植といって、既に80%程度の成功率のある手術法です。 この手術法を、長期間冷凍保存の後解凍された歯でも応用しようという訳ですが、成功率がどれ程になるのかは未知数です。

 次に、歯の幹細胞を活用して病気を治療できる可能性に関してです。 歯髄組織は、臍の緒と同じくらい未分化な幼若結合組織ですから、その細胞を分離して培養すれば、どんな組織でも作る事は可能です。 やけど治療のための移植皮膚の培養が実現化されつつあるとの事ですが、現在のところ医療倫理的なことも含めて試験段階です。

 3番目のDNA鑑定に利用というのは、災害などで不幸にして身元鑑定が必要になってしまった場合、判定材料として役立つことでしょう。

 今回送られてきたダイレクトメールの会社がどんな所なのかは分かりませんが、もう何年も前からこのような話題はいくつもありました。
 中でも、広島大学の知的財産創造部が特許を持っている「歯の銀行」はマスコミにも取り上げられ知られています。 すでに事業化され何本もの歯が冷凍保存されています。
 契約時の承諾事項には、将来その歯を使わなくても良い治療法が開発されている可能性もありうる、と但し書きされています。 また、そのときの全身状態で、せっかく保存してあっても移植手術が出来ない場合もあります。 あくまでも、将来の可能性に期待しての万が一への備えということです。
 しかし、少し前までは夢のような話だったことが、実現しつつあることは確かなようです。 今後に期待しながらも、先ずは今ある歯を大切にいたしましょう。


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