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 コラム 第50回     2008. 8. 27

親ばかのお話

  2週間にわたって繰り広げられたスポーツの祭典が、幕を下ろしました。 4年に一度のオリンピックは、何時も私たちの心に感動を残してくれます。 選手たちは、オリンピックの代表に選ばれることを自分の第一目標にして頑張ります。 代表に選ばれると今度は、国の代表として結果をださなければならないと言う、プレッシャーと戦わなければならなくなります。 そのプレッシャーを打ち消すために選手たちは、最後の練習に励みます。 その結果本番を迎え、やりすぎでピークの状態を作れず、持てる力を出し切れずに惨敗した選手が、日本選手以外でも何人もいたようです。 とても残念であり、かわいそうでもありましたが、それがオリンピックなのでしょう。 しかし閉会式では、どの選手もみんな笑顔だったので、思わずお疲れ様と声をかけたくなりました。

  以前に患者さんから、「歯が痛いと、何もする気が起きませんね。」と言われたことがあります。 その時は、自分がそんな思いをしたことがなかったので想像するしかなかったのですが、実際に自分が歯の痛みを経験してよくわかりました。 昨年の6月のコラム「30年経って・・・」で書いたことが、また起こりました。 暑い日に、のどが渇いて冷たいビールを口にしたとたんに、左上の奥歯にズキーンと電撃痛が走りました。 それからは、何を口にしても痛くて本当に何もする気が起りませんでした。 何かの拍子に冠の中のセメントが崩壊して、象牙質に直接刺激が伝わって、このような状況になったのは明らかでした。

  いい勉強になるからと、娘に治療を頼んだところ、これで痩せられるんじゃないのと、鬼のようなことを言われてしまいました。 確かに最近また胴回りが成長してはいましたが、それとこれとは別でしょう。 研修医を終えて大学院生になったばかりの娘にとっては、逃げたくなるような要求だったに違いありません。 そうは言ってもやはり放って置けなかったのでしょう、ちゃんと時間を作って治療に来てくれました。 ここに麻酔をして、ここをこう削って、ここをこうしてああしてと、うるさい患者の言うことを真剣に聞いて、 小言も言わず最後まで緊張顔で真剣に治療してくれました。 まるで親ばかですが、「こいつ結構筋がいいな。」などと思いながら上出来の仮歯で、痛みを忘れて美味しく食事をしています。

  治療を頼まれた娘のプレッシャーは、オリンピックの代表選手に似たものがあったに違いありません。 普段自分が治療している大学病院と、此処の診療室とでは、まったく勝手が違う緊張感があったことと思います。 何事も経験です、終わった後、お疲れ様と声をかけると、閉会式の後の選手たちのように、笑顔で帰ってゆきました。


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