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 コラム 第46回     2008. 4. 24

内輪のお話

 桜が散って間もなく、主役交代とばかりにハナミズキの季節となりました。歌舞伎座脇の街路樹も、今満開です。今年は昨年よりも約1ヶ月早く、これも地球温暖化の表れでしょうか

 先月は、私の使用している、白金加金という合金が安定であるというお話をしました。しかし、先日娘から「今の高校では、化学を選択している人しか、イオン化傾向なんて習わないよ。」と聞いて愕然としてしまいました。今の学校は、人が生活していく上で、あたりまえに経験することをどうして教えないのでしょうか。そのことを私に教えてくれた娘は、この春に研修医を終了して、母校の歯科補綴学教室の大学院生となりました。

 「補綴(ほてつ)」とはあまり聞きなれない言葉だと思いますが、体のどこでも欠損した部位を人工物で補う、という意味です。つまり歯科補綴学というのは、何らかの原因で失われた口腔機能や審美性の回復を目的とした、診療や研究をする専門分野になります。

 むし歯で崩壊した一本の歯の修復から、交通事故や癌の手術で生じた顔面の欠損など、或いは先天的な顎顔面の変形までを含んだ広い範囲の修復まで、多岐に渡る分野です。このような欠損部分に対し、機能と審美の回復を力学的にバランスよく配分し、長期間維持できるような緻密な設計が求められます。歯の欠損に限っても欠損歯をその前後の歯を削って橋渡しをするブリッジや、残っている歯に支えを求めて維持する可撤式の局部義歯、そして、全ての歯が無くなってしまった後に入れる総義歯があります。さらに最近では、インプラントといって、顎の骨に穴を開けそこに人工歯根を埋め込む手術をした後、歯冠形態の回復をすることもします。これらのうちどの場合も、上下の歯の噛み合わせが、本来の位置に再現できることが求められます。様々な理由で徐々に崩壊した噛み合わせの回復を如何するかが、世界中の近代歯科医学者によって、研究、解明され続けています。

 このように補綴学は、非常に多岐に渡り、歯科臨床の最も根幹をなす分野とも言えます。娘がどんな研究をするのかは未だ分かりませんが、私にも興味のあるところで、楽しみにしています。また、日本補綴学会で長年活躍していた先代の父も、大変喜んでおります。

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