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   コラム  第23回    2006. 5. 25 

歯の色のお話

  山々に新緑の眩しい今日この頃ですが、今年は春らしい爽やかな日が数えるほどしかありません。 でも、桜が咲き、その後診療室の窓から見える、歌舞伎座横の通りで、花水木の街路樹がいつもと変わらず花をつけ、季節は確かに巡っています。 そういえばもう何回この窓から、あの花水木の花を見たでしょうか。

  先日ある方から歯の黄ばみについてお尋ねがありましたので、今回は歯の色のお話をしようと思います。
歳と共に肌の色が変わってくるように、歯の色も少しずつ変化してくるのです。何故黄色く見えてくるのでしょうか。 では、歯の構造を思い出してください。

  歯茎から見えている所を歯冠部と言いますが、表面は、エナメル質で覆われ、内側に象牙質、最も中心部は、歯髄組織となります。 歯茎の中で見えない所を歯根と言い、象牙質の周りはセメント質で覆われています。 歯冠部の表層のエナメル質は、化学的にいうと、ハイドロオキシアパタイトの結晶の集合体です。 この結晶は、日々年々成長しています。結晶の成長とは緻密になると言う事で、結晶と結晶の隙間がなくなってくることです。 見た目には、白いチョ―クの状態から、スリガラスの状態になり、徐々に透きとおって来ます。 つまりエナメル質が、年齢とともに白色から徐々に透明になる事で、中の象牙質が透けて見えてくるのです。 またその象牙質は歯髄(歯の神経)の変化や石灰化が進むにつれ色の濃さを増してくるのです。

  象牙質は、その名の通り象牙色をしています。 この象牙質も十人十色、様々な色を持っています。 人種によっても違っていて、我々黄色人種は黄色が強く、白人はグレー味がかっており、黒人は白っぽい象牙質を持っています。

  また、象牙質が形成される成長期の環境でも、いろんな色の象牙質ができ上がります。 特徴的な例としては「テトラサイクリン歯」があります。 昭和30年代後半から40年代に新しい抗生物質が次々と作られ、小児科でも感染症に良く効くと多用された時期がありました。 その中でテトラサイクリン系の抗生物質に、形成途中の歯の象牙質を変色させる副作用が見つかったのです。 はえて来たばかりの子供の歯の色が茶色かったり黒っぽいと訴える親がたくさん現れたのです。 世界中で起きた現象でしたが、もともとグレーっぽい西洋人や、肌の色が濃い黒人の間ではそれほど気にならなくても、 日本人の歯はクリーム色をしていて、肌の色ととてもマッチしている状態の所に黒味がかったグレーや茶色い筋の入った歯がはえて来たら、 とても目立ち気になる事でした。

  歯の色の悩みがありながらも、虫歯でもない歯を白くする目的のためだけに削って白い冠を被せるのは患者さんだけでなく、 歯科医にとっても抵抗のある事でした。 そこで注目されたのが、ハリウッドティ―スと言ってアメリカの俳優さんや、 女優さんたちの間で写真うつりを良くするために撮影の時だけでも歯を白く見せるための技法でした。

  アメリカではスクリーンに出てくるスターの世界で、昔から歯を削って白いセラミックの歯を入れる事が流行っていました。 そしてまたそのハリウッドのスターに憧れたアメリカ人の間で、白い歯への願望が起きました。 ただ、普通の人達に歯を削ってまで白くする事に抵抗があった歯科医たちのグループから、歯の表面にマニキュアを塗る方法や、 エナメル質の表面を脱灰して白く見せる方法が開発されたのです。 これが、いわゆるホワイトニング、歯の漂白の基になったのです。

  歯を白くする方法にもそれぞれ長所短所がありますので、これに関しては、次回に解説いたしましょう。


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