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  コラム  第21回    2006. 3.24

諦めないおはなし

 WBC準決勝戦と決勝戦をTV観戦しました。日本、韓国、キューバどの国も一丸となって勝利に向けて戦う姿は、とても好感が持てました。 最後まで諦めず懸命に白球を追う姿勢は、見ている者に感動を与えます。 それに、共に超一流の選手達のプレーは、芸術的で美しくさえ見えました。 ただ勝利に対するほんの少しの意識の差が、勝敗を分けたと思います。

 さて、先日保健所からの依頼で、先月に引き続き、高齢者の介護予防教室で口腔ケアについての講演をしてきました。 その時の受講者は1ヶ月前と同じメンバーで、前回お話したことがひと月でどれほど効果があったかの評価をしました。 殆どの方が三日坊主だったといわれる中、何人かは非常に熱心に頑張られたようです。 その方たちは、口が乾くと訴えていらしたので、唾液腺のマッサージ法を指導した方たちでした。 お一人暮らしだと無口になって、への字口が続いてお顔の筋肉が弱くなり、結果として口が乾くようになってしまう事がよくあるのです。 他にも、飲んでいる薬の副作用で唾液腺の機能が衰え、口が乾くこともあります。 いずれにしても、使わないでいることによる機能の低下でそうなってしまうのです。そのことを専門用語で、廃用症候群といっています。

 平成18年度から介護保険制度の見直しで、介護予防という言葉をよく耳にすると思います。 これは、今お元気な高齢者や、介護度の低い要支援あるいは、要介護1の一部の高齢者に今後、要介護者にならないように予防しようというものです。 そのために重要なことが、廃用症候群にならないようにすることです。 これを目標にまとめられたのが、低栄養の予防、筋力低下の予防、口腔ケアを柱とした介護予防制度です。 頑張る事で廃用性萎縮が起こらないような努力目標の設定が可能になりました。しかし、加齢変化は、防ぎようがありませんので、無理は禁物です。 どれも大事ですが、私は、この三つの中でも取り組むべき一番大切なことは、口腔ケアだと思っています。 なぜなら、口腔ケアをすることで、美味しく食事が出来るようになり、活動的になり、筋力もアップするからです。 ただ、口腔ケアといっても何をすればよいのでしょうか。歯を磨くことだけではなく、耳下腺、顔、唇の周りなどのマッサージや、 舌や顎の運動や首の体操までたくさんあります。 しかし、あまり難しく考える必要はありません。バランスの良い食事をよく噛んで味わい、表情豊かによく笑うことで、 かなり充分な予防効果が得られるからです。

 大学を卒業してから、解剖学を学んだ私は、人体組織の秘められた力を知る機会を、様々な形で得ることが出来ました。 生体の再生能力、あるいは、修復能力に驚かされる場面も幾度か経験しました。 環境さえ整えば、思いがけない困難をも克服する力が、我々の体には備わっているのです。 また逆に使わなければ、折角の機能がどんどん衰えてゆきます。同時に免疫機能もどんどん低下してしまいます。 それを老化現象と諦めるか否かで、加齢による衰退曲線を緩やかにするか否かに別れるのです。 WBCで栄冠を勝ち取った王ジャパンのように諦めない気持ちで前向きに頑張れば、元気がみなぎってきます。

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