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 コラム  第16回    2005.10.20

免震構造のおはなし

 昨日も地震がありましたが、また大変な災害が起きてしまいました。 今度は、パキスタンで大地震が発生し40,000人余りが犠牲になられたようです。 ニュ―スの画像を見ると崩壊したビルはレンガを積み重ねただけのように見えました。 植民地時代に施行された、地震の無い国イギリスの建築基準法がそのまま今でも適用されていると聞いて驚きました。 基礎工事はどんな状況だったのでしょう。

 建築は基礎が大事だと聞きます。 昔は耐震構造といえばがっちりとした堅牢な骨組みが良いとされていました。 私の住んでいるマンションは、昭和の終わりの建築で、大深度地下まで基礎が打ち込まれていて地震が起きるとゆらゆらと大きく揺れて 力を上の方に逃がす耐震構造になっています。 しかし現在のものは、免震構造といって、ビルの地下にゴムの支えを置いてそこで地震の揺れを吸収してしまうのだそうです。 更に最近は既存のビルを建て替えることなく、しかもそのビルを使いながら免震構造にする技術まであります。 ご近所では、銀座ワシントン靴店が全面リニューアル工事と共に建物全体を耐震構造にしたそうです。 話はそれますが、私はいつもワシントンの靴を履いています。 中学生の頃から柔道をやっていたせいか土踏まずが無くてガニ股の私には、合う靴がなかなか見つかりませんでしたが、 ここの靴を履くと踵が痛くならずとても楽です。 今回の改修工事も地面からの衝撃を吸収してくれる靴を作っているワシントンだからいち早く最先端技術を取り入れたのでしょう。 建築工学の進歩は、目覚しいものがあります。 パキスタンでも復興後は、このような構造のビルが建ち並ぶことを願うものです。

 建築工学の進歩はすばらしいのですが、もっとすごいのは人間の体です。 私たちの体は生まれたときからあらゆる場所が免震構造になっています。 関節は骨と骨が直接ぶつからないように軟骨に覆われていて、更に関節包という袋に包まれ中が液体で満たされています。 これだけではなく筋肉や靭帯も力の衝撃をやわらげるクッションの役割を果たしています。そして歯にも見事なクッション構造がついています。 歯で物を噛んだとき顎の骨に直接衝撃がかからないように、歯の周りには歯根膜という弾力のある膜があって、力の分散をはかってくれています。 この歯と骨の間の空隙は歯根膜空隙と言い、歯根膜のほかに血管と神経が豊富にあってこれも衝撃の吸収をするために一役買っているのです。 つまりここの神経終末には、圧受容器と言うセンサーが在って、許容範囲を越えた力が加わったとき、「もうそれ以上噛むな」という反射(開口反射)が起こります。 簡単な例を挙げますと、お米の中に石が混ざっていて喰い当てた時の動きがこれです。 第2回目のコラムで紹介した芭蕉の句では、この反射が鈍ってきた自分の老いを嘆いて詠んだものです。 この様に歯は、コンピューター制御の付いた免震構造を持っているといえましょう。

 ところが最近よく耳にする歯科インプラントは、どんなタイプのものもこの繊細な機能は付いていません。 骨にドリルで穴を開けてそこに人工物を埋め込んで時間と共にこれが骨と癒着してがっちり固定されるものです。 最先端技術といわれていますが、果たしてそうでしょうか。私は、そうは思いません。 骨癒着し、がっちり固定されることにかえって問題があると考えています。 開口反射を起こすセンサー付きで免震構造の歯科インプラントができたら私も皆さんにインプラントをお勧めするかもしれませんが、 今はほとんどの場合お勧めしません。 それより神様が与えてくださった天然のものを大切にするほうに力を注ぎたいと思っています。


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