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 コラム  第15回    2005.9.20

かかりつけ歯科医のおはなし

 また大変な災害が起きてしまいました。今度は、アメリカ合衆国に巨大ハリケーンが上陸して大変な被害が出たそうです。 しかも半月が過ぎた今でもまだ被害の状況すらはっきりしていません。 アメリカと言えば、世界的に有名な緊急時対応組織FEMAを育てた国です。 日本からもこの組織を学びに毎年各機関から研究員を派遣していると聞いています。 そのアメリカでの災害でこの状況は、一体どうした事でしょう。 災害発生後は、一日でも早くもとの生活を取り戻せるように整然と復旧活動の指揮をとるはずだったのに何が起こったのでしょうか。 国民性とはいえ日本の災害発生時には全く起こらない商店への略奪行為も被災の翌日から起きてしまいました。 その他にも報道されない犯罪や事故が相次いで起きているそうです。 災害発生後に起こる犠牲は、どんな状況であろうとそれは、人災と言わざるを得ません。 我々アメリカには世界一の危機管理システムがあるから何が起きても大丈夫、という驕りと気の緩みがあったのではないでしょうか。 気の緩みはどんな場面でも良い結果になってはくれません。 何時どんな状況で何が起きるか分からない事に対して準備をすることは、ある意味においては、お金の無駄遣いのように思えてしまいます。 しかし、今回のように、起きてしまった後に慌てて投入した資金や損失のほうが、はるかに大きくなってしまうでしょう。

 先月の全国警察歯科医会に続いて、先日地元の京橋歯科警察医会でも築地警察署講堂に警視庁鑑識課検視官を招き、 スマトラ沖地震の犠牲者の検視活動報告を兼ねた研修会を開催しました。 各国から集まった検視チームが、赤道直下の暑さの中一致協力して頑張ったそうです。 犠牲者の身元確認に、歯科医による判定が最も重要な手段となったとの事でした。

 そこでも話題になりましたが、ひとりひとりが常に自分の歯科治療記録を保管しておく事がこのような状況になった際とても重要だということでした。 しかし各人が自分で自身の歯科記録を保管するのは難しい事です。 ですから、かかりつけの歯科医院を決めてそこで保管しておいてもらう事が大切です。 かかりつけ歯科医を持つ事の意義はこんなところにもあるのです。

当然のことですが、私たち歯科医師は、この目的で患者さん方の治療記録を保管しているのではありません。 的確な診断や治療には過去の記録をたどる事がとても重要なのです。 ですから本院では、父が開業した日からのカルテを全て保管しております。
私が生まれた年に初診でお見えになって、52年たった今私が拝見させて頂いている患者さんもおいでになります。 何十年も前に父が治療したところを今度は息子の私が治療するという事もあり、患者さんにも私にも感慨ひとしおです。 その当時の記録を見ながら、父がその時どのように考えて治療したのかを知った上で、これからの治療計画を立てるのは、非常に意義があることなのです。

記録の保存は、カルテの他にもいろいろな方法でしています。 レントゲン写真は最も一般的ですが、それにも種類があります。 デンタル写真は、数本の歯とその周辺組織の状況を細かく診るのに必要です。 パノラマ写真は、顎全体の状況を把握するために重要です。 頭部エックス線規格写真(セファロ写真)は、顔貌の変化を経年的に比較検討できます。 そのほか石膏の歯型模型やスライド写真なども保存してあります。これらの記録が皆さんには、様々な形でお役に立っています。 ですから皆さん、是非かかりつけの歯科医を決めておいてください。


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