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  コラム 第6回   2004.12.20

歯を食いしばる

東京では師走とは思えぬ暖かな日が続いていましたが、ようやく冬らしい冷え込みも感じられるようになりました。皆様お風邪など引いておられませんか。北の地域ではもう凍えるほどの寒さなのでしょうか。中越地震の被災地の皆様も寒さ対策は大丈夫でしょうか。

寒さの中で人は皆、肩を萎ませポケットに手を入れたり腕を組んだりして背を丸め、少しでも体表面積を小さくしようとします。同時に少しでも体温を上げるために震えて、奥歯を噛みしめたり歯をカチカチさせたりします。

皆さんは、寒い所から戻って体が温まった頃に歯が浮くといった経験をお持ちではないですか。あるいは、緊張や集中で無意識に歯を食いしばったような後、歯が浮いたり噛み合わせがおかしくなったりした事があるのではないでしょうか。

なぜこのような事が起こるのでしょう。

歯は骨の中から生えてきます、つまり歯の周りは骨に囲まれているのです。そして歯と骨の間には、歯根膜と言われる結合組織が介在しています。

この歯根膜は、歯と骨の間を豊富な線維でつないで歯が抜け落ちないようにしており、その線維の隙間には血管や神経線維が入り組んで網目状に走行しています。

歯を食いしばると、この血管や神経が圧迫され血行が止まり神経伝達の遮断が一過性に起きるわけです。その後食いしばるのを止めると、せき止められていた血液がどっと流れ込み歯根膜の内圧が亢進して歯が浮いた状態になるのです。

更に神経の圧迫によってズキズキと痛みも起きる場合があります。このとき、歯並びが悪く上下の歯が均等に接触していないと、飛び出して接触している歯ばかりに力が加わり部分的に圧迫を強く受けてしまいます。

この状態が何度も繰り返されると歯の周りの骨に吸収が起こって歯根膜の隙間が広がり歯がグラグラと揺れてきて歯周炎が起こってしまいます。これを外傷性歯周炎と言います。

更にここに細菌感染が伴うと局所的な歯周病となって放置すると歯が抜け落ちる原因ともなります。

ずいぶん怖い話に発展してしまいましたが、冬は寒い所で過ごす事が多かったり、年末仕事に追われたり、お正月休みに趣味に熱中したりと、食いしばることの多い季節です。

「歯を食いしばって難題に立ち向かう」と言いますが、試練の時に限らずスポーツ中などにも結構歯を食いしばる場面があります。その後に待っている身体的ダメージは想像以上に大きいものですから十分気をつけてください。

もし食いしばりを感じたら安静第一ですので、食いしばらないように気をつけるのは勿論ですが、しばらくはあまり硬いものを召し上がらないよう、またガムなど噛まないようにしておいてください。10分か15分毎にタイマーでベルを鳴らしてみて、そのとき食いしばっていないかどうかご自身で確認するのも一つの方法です。あまり気になるようでしたら早めにご相談ください。

この時期くれぐれもお体お大切に,そしてあまり食いしばらないようにお過ごし下さい。それでは皆様どうぞ良いお年をお迎えください。

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