ホームへ > 院長のコラム最新号へ

コラム・バックナンバー・インデックス
 
 コラム 第1回   2004. 7. 20

歯科のかかわる領域

  はじめまして。院長の片山隆です。 多くの方々に正しい歯科の知識をお持ちいただけるようホームページを作りました。 今日からこのページを使って私の考えなどをお伝えしてゆきたいと思います。

  皆さんが、歯科で真っ先にイメージするのは、虫歯や歯周病のことでしょうか。 それとも痛い、怖い、費用が高いということでしょうか。 これらについては追々お話することにしまして、今日は第1回目ですので、歯科のかかわる領域について書いてみたいと思います。

  歯科領域とは、別名口腔領域とも言います。これは、「こうくうりょういき」と読みます。 辞書を調べると「腔」は「こう」としか読まないことになっていますが、医学用語では昔から胸腔や腹腔と同じように体の中の空間を 「腔」と書き「くう」と読むことになっています。

  歯科というと歯ばかり考えがちですが、それだけではありません。お口の中全体、即ち口腔領域が私たち歯科医の専門分野になります。

  さて、日本の学校教育では何故、医学部の歯科ではなく歯学部なのでしょうか。
  欧米では医学部を卒業した後に歯学部に入る仕組みになっている国もありますが、日本の歯学教育の根底には、 独自に発展した日本古来の木彫義歯などを得意とした「入れ歯師」の流れがあり、医科とは一線を画していたからなのです。
  しかし、私の卒業した東京歯科大学の前身である日本最古の歯学教育機関の高山歯学院から始まる東京歯科医学専門学校や、 父の卒業した東京高等歯科医学校では、開学当初より基礎医学教育の充実を図り、戦後のアメリカの占領政策で、日本の今の歯学教育の基本が出来上がったのです。

  私たち歯科医師は学生時代、医学部の学生と同じように人体解剖実習に始まり全身医学を学んだ後、特に口腔領域を詳しく学びました。 更に義歯の作成法や虫歯の穴に金を詰めるための鋳造法を習得するために、理工学も学びました。

  体内の他のどんな組織でも(役目を終えて消滅してゆく組織は別として)傷ついたときには、 新しい細胞が組織を再生してくれる能力が備わっているのですが、 歯には再生能力が無いので、 虫歯を放っておくと細菌によって侵食されつづけ崩壊の一途をたどるのみです。

  最近「再石灰化」という言葉をよく耳にしますが、これは他の組織に見られる再生とは意味が少し違います。 虫歯は細菌感染症ですので、消毒して細菌を無くせば進行は止まります。そして表面に残った結晶成分がその場所で再度結晶化するというのが再石灰化です。
  しかし、それは表面のほんのわずかな部分で起こっていることで、開いてしまった穴を埋めることにはなりません。 ですから歯学部ではその開いた穴を埋めるための勉強が必要となるわけです。更に歯を失った患者さんには入れ歯が必要ですから、 入れ歯を作るための力学や材料学など種々の分野も学びます。 そして細かな手作業は職人の域ですし、審美デザインの面では芸術家にもなります。

  日本の歯科学生は、これらを6年間かけて勉強し、国家試験に合格した後歯科医師になります。 更に4年間、大学院で専門性の高い分野を学ぶ者もいます。私も、東京医科歯科大学歯学部顎口腔総合研究施設構造研究部門という長たらしい名前の場所で、 4年間研究生活を送りました。そのときのこともいずれご紹介しましょう。

  さて話を口腔領域に戻しましょう。 ヒトや動物が生きてゆく上で必要な栄養を摂取するための最初の器官が口です。食物を口に入れて飲み込むまでを説明しますと...

  目で見て臭いを嗅いで、唇で温度を感じ、硬さを感じ→前歯で噛み切り、奥歯で磨りつぶす→奥歯や頬っぺの内側と舌でこねて唾液と混ぜ合わす→ 飲み込むのに丁度よい硬さと大きさにして舌背の中央に集める→舌の奥を持ち上げ喉に送り込む→嚥下反射が起こり、 喉仏が持ち上がって気管への蓋が閉まり一気に食道へと運ばれる  ...  となります。

  ここまでの一連の動作を行なう場所が口腔領域、歯科医師の担当する所です。 勿論、喉から食道までの間は耳鼻咽喉科の領域でもあります。ですから、ご高齢で物がうまく飲み込めなくなってしまわれた方の治療やリハビリは、 歯科と耳鼻科が連携で行うこともあります。

  物を噛んで飲み込むというごく当たり前のことが難しくなったり、歳を重ねるということはなかなか大変です。 医療の進歩と共に人は長く生きられるようになりましたが、ただ生き長らえるのではなく、できれば快適に豊かに生きたいものです。

  口腔領域は狭い部分にもかかわらず、課題の多い領域だということが少しおわかりいただけたでしょうか。 健康の入り口を担当する歯科を通して、少しでも皆様のお役に立てるようにと、いつも思っています。


このページの上へ↑
Copyright(c) 2004-2019 Katayama-shika. All rights reserved.