義歯(入れ歯)の取り扱い
片山歯科医院では開業当初より、失ってしまった歯に代わるものとして、義歯による治療を数多く行ってきました。「義歯」と聞くと、異物感や取り外しの煩わしさを想像して嫌悪感を抱かれてしまう方もいるかもしれません。しかし、患者さんそれぞれに適した義歯を作製することで、長期間にわたり快適に過ごしている方もたくさんいらっしゃいます。
義歯による治療では、インプラントで必要な外科処置や、ブリッジ作製のために他の歯を削る、といった侵襲がほとんど必要ないのが利点です。そして何より適応症例が多く、基礎疾患があって外科処置のリスクが高い方や、失った歯の本数が多くブリッジ作製が困難な方にも行えるのが、義歯治療の大きなメリットだと思います。
ところで、患者さん方に新しい義歯をお渡しする際には、義歯の取り扱いや清掃方法について説明をさせていただきます。その説明をこれまでは口頭で行っていましたが、より皆さんに理解していただけるよう、このたび新たに説明書を作成いたしました。
この機会にすでに義歯を使用している方にも改めて確認をしていただきたいと思いますので、日常の取り扱いについてここに簡単にまとめておきます。
・食後は義歯を外して、歯と義歯それぞれを磨いてください。
義歯も、清掃を行わないと歯垢や歯石が付いてしまいます。汚れたまま使用を続けると、細菌が増殖して誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうことがありますので、日々の清掃が必要です。ただし、歯磨剤を使うと義歯に細かい傷がついてしまい、余計に細菌が付着・増殖しやすくなってしまいます。汚れが気になる場合は、義歯用泡ハミガキや食器用の中性洗剤であれば使用が可能です。なお、洗浄は水を張った洗面器等の上で行うと、手が滑って義歯を落してしまった際の破損を防ぐことができます。
部分義歯をお使いの場合、金属等のバネをかけている歯の周りには汚れが付きやすくなります。ですから、残っている歯も義歯を外してよく磨くことが大切です。


・義歯の洗浄は、水かぬるま湯で行ってください。
義歯に使われているレジンという樹脂材料は、熱により変形してしまいます。義歯が変形するとお口に合わなくなってしまいますので、熱湯による消毒や洗浄は行わないでください。
・義歯を外したら、水か義歯用洗浄剤に浸けて保管してください。
ティッシュ等に包むと誤って捨ててしまうことがあります。外出先で義歯を外した場合は、専用のケースに入れるようにしましょう。
義歯は乾燥させると材質の劣化が生じてしまうため、長時間外しておく際には水中で保管してください。また週に数回程度、義歯用洗浄剤を使用することで細菌の繁殖を抑えて口臭も防ぐことができます。
・問題なく義歯を使用できていても、定期的に(数か月に1回)受診してください。
お口の状態は変化します。必要に応じて義歯の調整・研磨・洗浄を行うと同時に、残っている歯も清潔に保っていくことによって、お口の中を長く安定した状態で維持していくことができます。
よく噛んで食事をすることは、全身の健康を保つことにもつながります。
ご自身の歯を問題のない状態で使い続けられることが一番ではありますが、歯を失ってしまい義歯が必要となった方には正しく取り扱うことで長く快適にお過ごしいただきたいと思っております。